「何度教えても、自分で考えて動かない」
「結局、自分がやった方が早い」
経営者や責任者から、このような言葉を聞くことがあります。
確かに、仕事への責任感が足りず、同じ注意を何度も繰り返す人もいます。
すべてを教える側の責任にする必要はありません。
ただ、ここで考えてほしいことがあります。
その人へ、本当に考えて判断する機会を渡しているでしょうか?
「任せたつもり」になっていないか
仕事を渡しても、少しやり方が違えば口を出す。
失敗しそうになると、すぐに自分が引き取る。
最終的には、経営者の指示どおりに進めなければ認めない。
この状態が続くと、従業員は考えることをやめます。
自分で判断しても、どうせ後から直される。
失敗すれば強く責められる。
それなら、最初から指示を待った方が安全です。
その結果、経営者は、
「誰も自分で考えない」
と、さらに仕事を抱え込みます。
従業員が任せられないから経営者が行う。
経営者がすべて行うから、従業員が育たない。
この循環が続いてしまうのです。
任せる前に共有したい四つのこと
任せるとは、説明せずに仕事を渡し、結果だけを求めることではありません。
少なくとも、次の四つを共有する必要があります。
1.何のために行うのか
目的が分からなければ、状況が変わった時に判断できません。
2.どの状態なら完了なのか
期限、品質、守るべき基準を明確にします。
3.どこまで本人が決めてよいのか
自分で判断できる範囲と、相談が必要な範囲を伝えます。
4.いつ確認するのか
最後まで放置せず、途中で確認する時期を決めます。
ここまで伝えて初めて、相手は自分で考えやすくなります。
自分と同じ方法だけを正解にしない
経営者には、これまで結果を出してきた方法があります。
そのため、違うやり方を見ると、不安になることがあります。
しかし、目的と基準を満たしているなら、自分とは違う方法でもよい場合があります。
相手の方法をすべて否定すれば、新しい工夫は生まれません。
もちろん、安全や信用に関わるルールは守らせる必要があります。
変えてはいけない基準と、本人に任せられる方法を分けることが大切です。
失敗を放置せず、学びへ変える
人を育てるために、どんな失敗でも許せばよいわけではありません。
同じ問題を何度も放置すれば、組織の信頼を失います。
大切なのは、失敗した人を責めて終わるのではなく、
何が起きたのか。
なぜ、その判断をしたのか。
事前に不足していた情報は何か。
次は、どう確認するのか。
を一緒に振り返ることです。
人格ではなく、行動と仕組みを見直します。
「あなたは責任感がない」ではなく、
「期限前の確認がなかったため、対応が遅れた。次からは前日に共有する」
と具体的にします。
失敗から何も学ばなければ、また同じ問題が起きます。
しかし、振り返りと改善があれば、その経験は組織の力になります。
人を育てるには、時間がかかる
自分が行えば10分で終わる仕事を、慣れていない人は30分かけるかもしれません。
その時間が惜しくて毎回自分で行えば、相手はいつまでも10分でできるようになりません。
短期的には、自分で行う方が早い。
長期的には、教え、任せ、振り返る方が、経営者の時間を作ります。
人を育てることは、今日の仕事を終わらせるためだけではありません。
将来、経営者がすべてを抱えなくても続く組織を作ることです。
運や人とのご縁を見ることもできます。
しかし、良い人と出会っても、育つ環境がなければ定着しません。
採用だけでなく、任せ方や伝え方、評価の仕組みまで見直す必要があります。
最後に
従業員へ任せることは、自分の責任を捨てることではありません。
相手が責任を持てるように、目的と基準を渡すことです。
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