「そろそろ、お前も店を継ぐことを考えてくれないか」
帰省したとき、父親からそう言われた。
65歳になった父。
母と二人で、30年以上続く飲食店を守ってきた。
子どもの頃から、両親が朝早く起きて働く姿を見てきた。
忙しい日も、疲れている日も、店を開け続けていた。
だからこそ、その言葉を簡単に断れなかった。
でも、横浜には今の仕事がある。
ようやく任される仕事も増え、これから挑戦したいこともある。
店を継ぎたいと思ったことは、一度もない。
「お父さんの店は大切。でも、私の人生まで決めないでほしい」
そう思う自分が、ひどく親不孝な娘に感じられた。
店を継がないことは、父親を否定することではない
父親が長年守ってきた店には、簡単には言葉にできない価値があります。
常連のお客様との関係。
家族で積み重ねてきた時間。
店を続けるために払ってきた努力。
それを知っているから、断ることが苦しい。
ただ、ここで分けて考えたいことがあります。
父親の仕事を尊敬していることと、自分がその仕事を引き受けることは別です。
飲食店を経営するには、接客や調理だけでなく、仕入れ、売上管理、人材確保など、さまざまな責任が伴います。
親への感謝だけで引き受けられるほど、経営は簡単ではありません。
継ぐ覚悟がないまま店を引き受けることが、必ずしも父親の望む結果につながるとは限らないのです。
本当に怖いのは、店がなくなること
「私が断ったら、店はどうなるんだろう」
その不安が頭から離れない。
父親が大切にしてきた場所を、自分の返事一つで終わらせてしまうように感じる。
しかし、店を続ける方法は、娘が経営者になることだけではありません。
例えば、従業員への承継、第三者への事業譲渡、規模を縮小しての営業など、状況によって検討できる選択肢があります。
もちろん、どの方法にも条件があり、実現できるとは限りません。
大切なのは、父親が本当に望んでいることを確認することです。
店の名前を残したいのか。
料理の味を残したいのか。
それとも、安心して引退できる後継者を探しているのか。
「娘に継いでほしい」という言葉の奥に、何を守りたいという願いがあるのか。
そこが分かれば、話し合う内容も変わります。
「継がない」と伝える前に、聞いてほしいこと
いきなり結論を伝えることが怖いなら、まず父親の話を聞いてみてください。
「お父さんは、あと何年くらい店を続けたいと思っているの?」
「私が継ぐ以外の方法は考えたことがある?」
「店の何を、一番残したいと思っている?」
そのうえで、自分の気持ちも伝える。
「今の仕事を続けたい気持ちが強い。だから、私が店を継ぐという約束はできない」
「でも、お父さんたちが守ってきた店を大切に思っている。ほかにできることがないか、一緒に考えたい」
父親がすぐに納得するとは限りません。
寂しがるかもしれないし、怒るかもしれない。
それでも、曖昧な返事を続けるより、お互いの希望を知ることが重要です。
事業承継には、時間も準備も必要だからです。
親の人生も、自分の人生も大切にするために
四柱推命などの鑑定で、仕事の適性や今後の方向性について相談することもできます。
しかし、家業を継ぐべきかどうかを、占いの結果だけで決めることはできません。
店の経営状態、借入れの有無、本人の希望、両親の今後の生活。
現実に確認するべきことがあるからです。
必要に応じて、事業承継に詳しい公的な相談窓口や専門家を利用することも大切でしょう。
父親が人生をかけて守ってきた店。
その価値を認めているからこそ、軽い気持ちで「継ぐ」とは言えない。
継がないという決断にも、誠実さはあります。
父親が築いてきた人生を大切にすること。
そして、自分がこれから築いていく人生を大切にすること。
その二つを、対立するものとして考える必要はありません。
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